トラフ式太陽熱発電
トラフ式太陽熱発電(Parabolic trough 雨樋型)とは、曲面鏡を用いて、鏡の前に設置されたパイプに太陽光を集中させ、パイプ内を流れる液体(オイルなど)を加熱し、その熱で発電する発電方式である。パラボリック?トラフ方式、分散方式などとも呼ばれる。 タワー式太陽光発電と比較すると、高温の液体が移動する距離が長くなるため熱損失が大きくなりがちであるが、タワーの一点に光を集中させる必要が無く、鏡を単純に並べることが出来るため大規模な施設の建設が容易である。 各鏡において線状に集光し、パイプを流れる液体で集めた熱エネルギーを運搬するという形をとるので、温度は400℃程度となる。そのためより低い温度でも効率的に発電できるタービンの開発なども求められている。太陽熱発電 集光集熱の仕組み光を線状に集光する曲面鏡と、その前に延びるパイプ、太陽の動きに追従してそれらを動かす機構、高温の液体を循環させるポンプ、蒸気タービン、発電機などで構成される。 各曲面鏡で反射された太陽光が、鏡の前を横切るパイプを加熱し、そこで加熱された液体(オイルなど)が蒸気タービンに送られて水を蒸発させ、蒸気タービンを回すことにより、発電が行われる。蓄熱器を用いて熱を蓄えておけば、夜間の発電も可能となる。また、蒸気タービンを用いることを利用して、特に夜間や曇天時など、天然ガスなどの燃料を用いてガスタービンを回して発電し、その排気ガスの熱と、太陽熱とをあわせて蒸気タービンを回すといった方法で、効率的な発電を行うものもある。このような、従来の火力発電と太陽熱発電とを結合したものは、ISCCS(Integrated Solar Combined Cycle System)と呼ばれる。
トラフ式太陽熱発電の例?計画 Solar Energy Generating Systems (SEGS) :アメリカ、カリフォルニアのモハーヴェ砂漠に建設された9基の太陽熱発電所。SEGS I は1985年に運転開始。SEGS IX の運転開始は1991年。天然ガスによる火力発電を併用しており、合計出力約350MW。天然ガスの燃焼による発電は、全体のおよそ25%である。現在世界最大の太陽熱発電所であり、太陽光発電をあわせても世界最大の出力を持つ。 Nevada Solar One :アメリカ、ネバダ州に2007年に建設された。カリフォルニアのSolar Oneと関係は無い。出力64MW。 Andasol[編集] 発電施設Andasol 太陽発電所はスペインのグラナダのGuadix近くのヨーロッパ初のトラフ型太陽発電所である。 Andasolはヨーロッパ発のトラフ式太陽発電所でAndasol 1は2009年3月から稼動している。高度1100mの高地に設置され、砂漠気候のおかげで年間日射量は2,200 kWh/m2である[2]。 どちらの発電施設も発電出力は50 メガワット(MWe)で年間約180 (GW·h)(1年あたり21 MW)である。それぞれの集光器の面積は51 ヘクタール(サッカーの競技場70面に等しい)。 敷地面積は約200 ha[2]。 Andasolは日中の熱を蓄熱装置を備える。硝酸ナトリウム60%と硝酸カリウム40%の混合溶融塩に蓄熱する。夜や曇天時にはこの熱でタービンを駆動して発電する。これにより年間の発電時間は倍になる[3]。 蓄熱量は1,010 MW·hの熱で夜間や雨天時にタービンを約7.5 時間全力運転することが可能である。蓄熱装置はそれぞれ全高14 m、直径36 mの溶融塩を貯めたタンク2基で構成されている。Andasol 1は電力を最大200,000人に供給できる[3][4]。j-contents Andasol 1の建設費は約300百万ユーロ(380百万米ドル)である[5] 。開発会社によるとAndasolの1kw?hあたりの発電コストは0.271ユーロを見込んでいる。[6] 熱エネルギー貯蔵コストは1kw?hあたり50米ドルで アメリカの国立再生可能エネルギー研究所 (NREL)のGreg Glatzmaierによると Andasolの総費用の約5%である[5]? スペインでは太陽熱発電の電力は固定価格買い取り制度により0.27ユーロ/kW·hで25年間に買い取られる[4]。 Andasol発電所はスペインの電力網が夏季に空調設備の稼動によって電力需要が頂点に達する時に助ける。 Andasolからの電力供給は日中で、午後に最大出力に達するので電力需要に応じやすい[4]。